高温に伴う農作業安全および農作物等の技術対策について
福井県HPより
高温に伴う農作業安全および農産物等の技術対策について
令和6年8月1日
福井県農業総合指導推進会議
〈農作業中の熱中症対策〉
農業従事者の中には熱中症の具体的な症状が分からず、知らず知らずに熱中症にかかっている方が多くいる。特に高齢農業従事者は脱水しやすいため、こまめな水分と塩分の補給や休憩をとるように周囲の方が協力して声かけを行う等、熱中症を予防する。
(1)暑さを避ける
・高温時の作業は極力避け、日陰や風通しのよい場所で作業
(2)こまめな休憩と水分補給
・喉の渇きを感じる前に、こまめに休憩し水分・塩分を補給
(3)単独作業は避ける
・複数名で作業を行う、時間を決めて連絡をとり合う
(4)熱中症対策アイテムの活用
・帽子や吸湿速乾性の衣服の着用、空調服や送風機の活用
〈技術対策〉
〇カメムシ対策
7月上旬のカメムシ類の発生は平年より多く、高温でカメムシ類の活動が活発化している。農作物への吸汁害を抑えるため、発生を確認したら防除を行う。
○水 稲
登熟の向上および未熟粒の発生回避のため、収穫直前までこまめな間断通水を実施する。高温多照年は成熟期が早まるため、積算気温を目安に籾水分を計測して適期に収穫し、刈遅れによる胴割粒の発生を防ぐ。
○大 豆
土壌の乾燥で子実肥大が悪くなるため、降雨がない場合は、5~7日おきに畝間かん水する。かん水は短時間で多くの水を入れるようにし、畝間に水が行き渡ったら排水口および暗渠の栓を開け、速やかに排出する。
〇そ ば
土壌の乾燥で出芽率が低下するため、降雨がなければ、小畝立て播種機は使用しない。
○野 菜
1 高温障害防止対策
(1)施設野菜
・ハウスの妻面、側面、天窓をできる限り開放し、ハウス内の通風を確保し、温度低下に努める。(特にハウスの妻面および肩部より上の通風は昇温抑制効果が高い。)
・日中は遮光カーテン等で遮光し、ハウス内および植物体の温度低下を図る。遮光する場合は外部遮光の効果が高く、ハウス屋根部に遮熱剤を塗布するのも効果的である。
・地温上昇防止対策として、敷わらや地温抑制マルチを使用する。また、畝間(通路)にも敷わらや防草シート等を被覆しハウス全体の地温低下を図る。
・ハウス内が乾燥する場合は通路にもかん水する。(かん水による気化熱で温度低下も図れる)
・ハウスの昇温抑制対策として、細霧冷房、ハウス屋根部への散水等も効果が確認されている。
(2)果菜類
・トマトは、ホルモン処理を夕方温度が下がってから行い、3段花房以降はジベレリンを加用する。
・高温によるカルシウム欠乏等を防止するため、開花時にカルシウム剤を葉面散布する。
・極端な遮光による日照不足は花芽分化に影響するため、午前中はカーテンを開放する等、光合成量を確保しながら遮光や温度低下対策を実施する。
(3)露地野菜
・高温によるチップバーン等の生理障害対策として、基肥にカルシウムやホウ素入りの微量要素を施用する。また、窒素肥料の多用を避ける。
・夏期高温時に播種、定植する場合は、定植直後からかん水チューブ、スプリンクラー等で散水し、確実に活着させる。やむを得ず畝間かん水する場合は、除草剤の効果が低下するので、雑草対策を徹底する。
・ネギは、高温時にかん水すると軟腐病や白絹病を助長させる恐れがあるため控える。やむをえずかん水する場合は、根の呼吸量が低下する日没後など地温が低下した後に行う。
(4)共通
・かん水は、地温が十分低下した早朝や夜間に行う。
・適期収穫を行い、収穫遅れによる草勢低下を防ぐ。また、収穫は早朝に行い品質低下を防ぐ。
2 病害虫防除
(1)高温時は薬害が発生しやすいので、薬剤散布は気温が低い時間帯に実施する。
(2)高温乾燥時には、スリップス類、ハダニ類等が多発しやすいので定期的に防除を行う。
(3)高温性の病害(軟腐病等)発生も懸念されるので、発生前の予防防除を徹底する。
(4)トマト等は高地温により青枯病の多発が懸念されるので、敷きわら等で地温低下を図る。
○花 き
1 水管理、土壌水分保持対策
日中、葉がしおれ、朝夕でもしおれが回復しないようであれば、土壌がかなり乾いており、生育、開花および品質に悪影響を及ぼすので、次の対策を講じる。
(1)水田花き
・かん水は地温が十分低下してから行う。地温が高い時に行うと、かん水した水が熱くなり根を傷めるので、かん水は、十分地温が低下した夜間に行い、できるだけ短時間のうちに終えるようにする。日の出前には終了するようにする。
(2)スイセン
・促成スイセンでは、遮光して気温25℃を目安に気温・地温の低下に努める。なお、散水は朝夕極力行う。
(3)施設花き
・土壌水分の蒸発抑制と地温上昇防止のため、ワラ等でマルチを厚めに行う。
・換気を徹底する。
・出荷が近いものでは、高温、かん水不足による品質低下を回避するため、日ざしが強い時間帯に遮光を行う。
2 高温対策
高温期に播種、定植するものは次のことに特に留意する。
(1)地温、気温の低下を図るため、定植日の5日程度前から定植後5日程度は遮光する。また、予めかん水し、定植時の土壌水分を十分に保つとともに、定植後のかん水を必ず行う。
(2)播種後の管理は雨よけ下で行い、遮光し、温度の低下を図る。播種箱は風通しの良いところで管理する。
3 病害虫防除
高温・乾燥によりダニ類、アブラムシ類、スリップス類の被害が多くなるので防除を行う。また高温で植物体がしおれていると薬害を受けやすいので、朝方の気温が低く、植物体のしおれがない時間帯に農薬散布を行う。
○果 樹
1 土壌乾燥防止
草との土壌水分の競合を避けるため、果樹園の下草をていねいに刈り取り、刈り取った草は樹冠下に敷き土壌表面からの蒸散を防ぐ。
2 かん水
5日程度雨が降らない場合は、1回当たり20mm程度をかん水する。砂地など乾燥しやすい土壌の園地では、土壌の乾燥状況に合わせてかん水間隔を短くする。
また、幼木は根が少なく、乾燥に特に弱いので株元にたっぷりかん水する。
3 病害虫防除
ナシ、ブドウなどでは乾燥するとハダニの発生が多くなるので、発生状況を確認し防除する。
4 収穫
収穫期を迎えた品目では、果実温の低い早朝での収穫、選果等を徹底する。
○畜 産
1 畜舎管理
(1)舎内の換気に気をつけ、送風機や換気扇の活用を図るとともに、状況に応じ、屋根や畜舎周辺への散水、屋根への石灰塗布、軒先等におけるスダレや寒冷紗の設置により舎内温度を下げる。
(2)残飼の腐敗に注意し、除ふん、畜舎の清掃など環境の改善に努める。
2 乳牛、肉用牛
(1)給飼は朝夕の涼しい時期に行い、嗜好性の高い良質の飼料給与に努める。
(2)こまめに給水器の点検を行い、冷水を十分に与える。状況に応じサプリメントなどを利用してバランスのとれたミネラルの補給やビタミン類の添加を行う。
3 豚、鶏
(1)密飼いを避け、散水や噴霧により、畜舎内気温の低下や体温上昇の防止を図る。
(2)油脂などの栄養価の高い飼料の給与やビタミン類の補給により、体力低下の防止に努める。
4 飼料作物
(1)牧草類
牧草類については、降雨まで刈り取りを延期する等、株の枯死防止に努める。
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